技を盗む

ある病院に勤めている人の話。

「若い人が入ってきたとき、それが医師だろうが看護師だろうが事務員だろうが、上司は即戦力を求めていて、育てるということをしなくなった。だから今は、若い人が育っていかなくなった」という。

あるいはそうかも知れない。
しかし、逆のことも考えられる。

若い人たちは「技を盗む」ことをしなくなっているということもあるのではないか。
西洋式のやり方で、懇切丁寧に行き届いた教育を受けていて、自分からつかみ取っていくという積極性さがなくなっていはしないか。

私がなぜそのようなことを言うのか。
ヨーガのあるDVDを見ていて「なんでこんなに懇切丁寧に説明するのだろうか」という感想を持ったことがあるからだ。
ヨーガを指導していたのはアングロサクソン。
西洋式の教育というものは、こういものなんだなと、妙に納得したことがあったのだ。

日本の指導の仕方は、先生のやっているのを見て、それを真似しながら、自分のものにしていくというやり方だ。
それが技の伝承である。

「本当に充実して満足できる個人を育てる」ことが指導者の仕事で、若者がその技を磨いて、人間として成長するという道を歩むことを助けるものだった。

年齢を問わず道を歩むという姿勢がなくなった今日だが、だからこそ、東洋的な「道」の思想をしっかりと伝えて行く仕事が、私にあるように思えてならない。

実際、わずかずつではあるが、30歳代から40歳代前半の若者が私のところに来るようになってきている。
未来は、こういう人たちから開けて来るのではないか。